11話
・・・刻々と時間だけが過ぎる。
10時なり11時になり、12時を過ぎて、何も連絡がない。
(どうゆうこと?)
ソファの上で、時計とにらめっこして、ジッと待っていた茉莉は、段々と腹が立ってきた。
ひょっとすると・・・歩は来ないかもしれない?
それを思うと、サーと血の気が下がる心地がした。
そもそも、歩が、河田の家を継ぐことになってしまい、どう思っているかを、茉莉はうっかり聞き損じていたのを思い出す。
こんな事になって、怒っていないとも限らないのだ。
茉莉に怒っているとしたら、まさに八当たりだと思った。
武雄の気持ちを、茉莉に向けることが出来なかったのは、仕方のないことだったし、歩が河田の当主になることを決めたのは、全く茉莉の知るところではなかったのだから・・。
(・・・いけない。一人でいると、ゴジャゴジャいらない事ばかり考えてしまうわ・・。)
河田の家に継ぐことに対する不満は、直接本人に聞くに限る。
意外に何とも思っていないかも知れないのだから。
(ゆったり待っていよう・・。)
思って、しばらく待って・・・一人ポツンと彼を待っている自分の姿が、あまりに憐れな感じになってきた。
1時近くなって、さすがに部屋に入ってくる気配さえないのに。待っているのもなんだかばからしくなってきた。
先に眠ってしまおうと思い、ベットに入る。
(帰ってこないなら、連絡くらいくれてもいいのに・・。)
みじめだった。
(もう眠ろう)
そう考えて、目をつむるものの、結婚式の興奮と緊張とが重なってこれ以上ないくらいの疲労が襲っているのに、睡魔が訪れない。
いやかえって、疲れすぎているのだ。
眠れない。
仕方がないので、寝室を夜探しして、ブランディーを見つけると、一気にあおった。
すぐにも、景色が回り、意識を失うように、眠りについた。